序章  ~少年の日常に降り立つ不幸~

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1  学園中に鳴り響くチャイムの音。それは時の節目を知らせ、今は全カリキュラムの終了を告げていた。  チャイムと同時に生徒達はガチャガチャと筆記用具等をしまい、教卓に置かれた教科書等を抱えて教師は退出する。  教師がいなくなった教室では、静寂から解放された生徒達の話し声が賑わいを見せていた。昨日のテレビ番組の話やら、週刊漫画雑誌のネタバレ会話、放課後の遊び歩く約束や晩御飯の話など、各々が好き勝手に会話をしている。  そんな中、チャイムの音でようやく現実世界に舞い戻り、机から顔を上げた茶髪の少年が一人。その目は何を映し出しているのやら。難解な方程式が週番(日直の週バージョン)によって消され綺麗になっていく黒板をぼんやりと眺めていた。文字一つ書かれていない綺麗な白紙のノートを開きながら。 「歩、また寝てたの? よくそれで学年二番を保てるよね」  寝ていた少年、神谷歩(かみや あゆむ)はまだ焦点の合っていない目で隣に立っている黒髪の少年を見る。 「恭夜か。お前こそノートバリバリとってんだろ?」 「それが普通だよ。まぁ、歩は普通じゃないからね」  苦笑混じりに言う少年。彼の名は六条恭夜(ろくじょう きょうや)。歩とは小学校からの付き合いで、所謂、腐れ縁という奴だ。  中性的な顔立ちの上、華奢であるため性別の判断がし辛いが、正真正銘の男である。しかし、その容姿から間違って痴漢にあったことが有るとか無いとか。その時、一撃で痴漢を仕留めたという噂もある。 「あれか。俺は異能力者か? 言っとくが俺は普通の平凡な高校生ですから」 「どんなに眠たくなくても眠ってしまう能力とか。すべてのやる気を打ち消す能力とか。ランクはサードくらいいくんじゃない?」 「おいおい、サードって上から三番目だろ。俺ら、一番下のテンスにも入ってねぇし」
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