第1章

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夜中降り続いた激しい雨も朝にはすっかり上がり、南の空には艶やかな虹がくっきりと架かっている。 桜並木の上に架かる虹 そんな幻想的な風景を目の前にたくさんの人々は足をとめて、感嘆の声をあげたり、写真に収めていく。 そんな中、一人の少年が空を見上げながらため息を洩らす。 真新しいブレザーに身を包んだ彼の名前は斎場美明(さいばよしあき)と言った。 女のような名前 150センチ台の身長 中性的な顔 それらは美明にとって最も触れられたくないコンプレックスだった。 女に間違えられることもしばしばあり、トイレに行ったら 「女子トイレはこちらですよ」 と声をかけられ赤っ恥を掻くことに最近慣れつつある。 また、病院で 「斎場【みあき】ちゃん」とかよばれるのなんて毎回だ。 そんなときには笑って自分の性別や名前の呼び方を教えるのだが、実際、心の中では少し傷付いている。        ・・・ ぶっちゃけるとかなり傷付いている。 そして美明にはだれにも言えない秘密があった。
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