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ソン軍曹は、あきらかに疲れ切った表情をしていた。
「よく来たな、新兵共。最初に言っておく。我々はここを死守するようにと命令を受けている。ここを突破されたら終わりだ。よって後退はないと思ってくれ。」
ソン軍曹はそう言いながら、ため息をついた。
「ヤン伍長、点呼を。」
ソン軍曹の隣にいるヤン伍長が名簿を見ながら、点呼を始めた。
「一等兵、イ・ヨンマン。 一等兵、キム・ソンボク。
二等兵、ホ・ジンソク。 二等兵、コ・カンフォ。 二等兵、キザ…」
ヤン伍長は驚いた表情を浮かべ、最後の一人の名を呼ぶのをやめた。最後の一人とは、私が煙草をあげた男であった。
ヤン伍長が名簿をソン軍曹に見せると、ソン軍曹も驚いた表情になり、私が煙草をあげた男の前に立った。
「お前、日本人なのか?」
その男はうなづいた。
「どうして日本人が我が韓国軍にいる?」
ヤン伍長が怒鳴った。
「どうしてだと?お前らが俺を徴兵したんだろうが!!」
男は怒鳴り返し、二人の間にソン軍曹が割って入った。
私が感じた、彼のしゃべり方のなまりは、この時わかった。彼が日本人だったからである。
「おい、この分隊に木崎善吉という日本人はいるか?」
小隊長のチャン少尉がそう言いながらやって来た。 その日本人以外の者は、慌ててチャン少尉に敬礼をする。
「お前が木崎か?一緒に大隊本部まで来い。」
チャン少尉が、その木崎という日本人を連れて行った後、私達は彼の話になった。
私自身も驚いた。日本人が韓国軍兵士としている事に…
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