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イ・ヨンスン一等兵がたずねた。
「馬鹿者!!我々に撤退する場所などない。」
チャン少尉は怒鳴り、イ・ヨンスン一等兵を殴った。
「ヤン伍長、ソン軍曹は大隊本部で仕事がある。お前が分隊を指揮しろ。」
そしてチャン少尉は、イ・ヨンスン一等兵を睨み
「お前の分隊はたるんでるぞ!!しっかり教育しておけ!!」
と、怒鳴り去って行った。
おかげでイ・ヨンスン一等兵は、今度はヤン伍長に殴られるハメになってしまったのだった。
「木崎、分隊の先頭に立て!!」
ヤン伍長の言葉に、木崎二等兵は地面に唾を吐いた。
「お前らの戦争だろ、俺は関係ねぇ。」
「いいから立て!!」
殴り合いそうになる二人の間にカン・ソンギ上等兵が割って入り、我々は偵察へと出掛けたのであった。
「まぁ真っ先に楯となって殺(や)られてくれるのは木崎だからな。」
そんな陰口も、彼の姿をすぐにやんだ。分隊の先頭に立つ木崎二等兵の後ろ姿は、まさしく本物の兵士であった。
「動きにスキがないな。」
ソン軍曹やヤン伍長と同じ現役兵であるカン・ソンギ上等兵は、そう誉めていた。ヤン伍長も、けっして口には出さないが木崎二等兵の兵士としての技量を認めざるを得ない表情を浮かべていた。
「だから言ったでしょ。日本海軍の空挺部隊は精鋭だって。威張りくさっていた日本陸軍の連中とは違うんですよ。」
カンフォが少し自慢げに言うと、ヤン伍長がカンフォを軽くたたいた。
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