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ミナミとリーレイが向かった先は中庭だった。
今はちょうど琥珀色の花が満開で、風に揺れては散っていく光景が二人の瞳に映った。
「うわー…キレー…!ねえ!あの花、何て言う花なの!?」
「あれか?ーーインディスカという花だ」
「インディスカ…か。何か由来でもあるの?」
「ああ。植物にはそれぞれ精霊が宿ると言われている。この木にもインディスカという精霊が宿っていると言われている。本来なら冬に咲くはずだが、遥か昔に片割れを失い、その片割れを待つために春一杯まで咲くようになったと言い伝えられているんだ」
そう言ってインディスカの木を見上げるリーレイの横顔をミナミは盗み見た。
その表情はいつもより穏やかで、眉間の皺も若干薄れている。
「私がいた日本という国には桜っていう綺麗な花があるの」
「……サクラ?」
突然、元の国の話をし始めた隣の娘に、リーレイは片眉を上げた。
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