一章 若き皇帝

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「そう、桜。その桜の花びらを地面に落ちる前に掴むと願い事が一つだけ叶うんだって!」 「……ずいぶん簡単に願い事が叶いそうだな」 「確かにね。…私も春になるたびに花びらを追っかけ回したよ。ーー所詮ただの言い伝えだけどね」 「言い伝えか…」 「うん。…ま、言い伝えってのは大袈裟かも。どうせそこらへんの誰かが何となく口にしたのが広まっただけだと思うし」 自嘲するかのように笑うミナミを見て、リーレイはふと浮かんだ疑問を口にした。 「言い伝えそのものを信じていないのか?」 彼女の言葉を聞いていると、昔は信じていても今現在は信じていないように聞こえる。 いや、多分きっと信じてはいないだろう。 リーレイの問いに一瞬表情が固まると、すぐさま笑みを浮かべた。笑っているのに泣いているような、そんな笑みを。 .
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