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「…全く大した女だよ、お前は。皇帝の俺にそんな口をきいた女はお前が初めてだ」
「あら、それはそれはどうもありがとう」
にっこり微笑んで優雅にお辞儀をして見せた。
「ーーったく……行くぞ!せっかく用意した紅茶が冷める。早く来い!……ミナミ」
ぼそりと呟くように自分の名前を呼んだ夫に、ミナミは嬉しそうに目を輝かせた。
とても小さくて聞き取りづらかったが、確かに私の名前を呼んだ。
この世界に来てから初めて彼に呼ばれた。
ミナミは胸の内に湧き上がる喜びを隠すように大きな声で夫となった若き皇帝の名を呼んだ。
「リーレイ!ちょっと待ってよー!!」
ムスッとした顔で立ち止まり振り向いた彼だが、怒っているわけではないことを知っている。
その証拠に、耳朶が赤く染まっているからだ。
退屈で窮屈だと思っていた生活は、これから楽しいものへと変わるかもしれない。
この不器用な皇帝様が傍にいるなら…
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