I need you Ⅰ

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柔らかな日差しの中、私を呼ぶ声が聞こえる。その声音は、怒っているとも、呆れているともとらえられる、不思議な低い声。そんな聞きなれた声に、私が振り向けば、彼は翡翠色の瞳で、私を見つめる。その瞳は明らかに冷たくて、それでも、私はひるまない。彼の本当の優しさを知っているから。この人が私に、部下に対して本気で怒るというのは、まずあまり見ない。私が仕事をさぼって、全部書類整理を押し付けたとしても、結局は許してくれるのだ。そんな上司を、隊士は慕い、尊敬する。少し前までは少年の面影のあった彼も、ここ数年で大人びた表情を見せるようになった。低めだった身長も少しは伸び、もともと長身だった私との差もあまり目立たなくなってきている。それがうれしいと感じることもあれば、やはりどこか、さびしいと思う節もある。それでも、この関係はずっと続いてきたから。私は自分の知らないところで、安心していたのかもしれない。今だっていつものように私が仕事をさぼり、彼がそれを咎め、執務室へと連れて行かれる。そんな、ありきたりで平和な日常だった。 「たいちょー、今日お仕事終わったら、ご飯行きましょうよっ」 「サボってたやつがよく言うこった」 ここ数年で、私は隊長との距離を縮められた気がする。前までは―――、藍染が尸魂界を裏切ったときくらいまでは、隊長が就任したばかりともあって、他の隊よりは関係がぎこちなかったかもしれない。でも、今となっては八番隊、十一番隊の隊長、副隊長の関係に劣らないくらい、信頼しあえていると自負している。
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