I need you Ⅰ

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「…いえ、私の知ってる隊長は、強いんです、本当に。それは、戦闘能力とかだけじゃなくて、心…とかも、」 「…くせぇな」 「悪かったですねー」 悪戯気に舌を出せば、それに呆れるように、隊長が苦笑する。なんとか、今の空気は乗り切った。そう思いながら、私は小さく息を吐く。隊長が、雛森のことを思っている時の空気は、なんとなく苦手。重苦しいっていうか、辛い、というか。藍染に雛森が斬り伏せられた時、隊長は雛森を護り切ることができなかった。正確にいえば、護り切ることができなかったと思っている。 『そんなことありません、隊長はちゃんと護れていました』 『一瞬で、切り捨てられたのに、か?』 そう自嘲気味に笑った隊長を、今でも覚えている。人には不器用な優しさを見せるくせに、自分には厳しすぎる。それはある意味、隊長の悪いところでもあって。もう少し、自分を認めてあげてください。いつか私がこういった時も、浮かない表情をして、心ではたぶん、雛森のことを考えていたんだと思う。 『俺はもっと強くならなきゃいけねぇ。…自分の未熟さに、腹が立つ』 藍染が去った後、意識を取り戻してすぐに隊長はこう言った。氷輪丸をきつく握りしめている姿からは、隊長の決意と、強い意志が読み取れて。それから、隊長は以前よりも強さを求めるようになった。 ―――護るために。 「…隊長、無理は……しないでくださいね」 「いきなりなんだ」 少し寂しげに笑って言えば、返ってくるのはしかめっ面とぶっきらぼうな声。私の真意がわからなくてもいいから、この言葉を投げかけたかった。私は、あなたの副官だから。あなたの背中を護る、大事な役目をもった、副官だから。
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