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和泉歩(38)が先日殺害された。後方から脇腹の辺りを包丁で刺されての出血死だった。 通報したのは、その夫の和泉豊(38)、そして、彼女を殺害したのも夫の和泉豊と断定された。 彼が真っ先に、 「私が歩を殺しました」 と自供し、 凶器の包丁から彼の指紋が検出され、通報時刻と死亡推定時刻、現場の状況からほぼ間違いないということだった。 そして、僕がその和泉豊の取調べをする事になった。 取調べ室で彼と対面するが、彼は、さも何事も無かったかのように平然として、落ち着き払っていた。 普段と何等変わらない雰囲気というものを彼は醸し出していた。 僕にはどうしてそんな風に普通にしていられるのかが不思議だった。 ただ、そう見えるだけで、内心動揺しているかも知れないし、 人を殺した後というのは、妙に落ち着くものなのかも知れない。 それとも、夫婦仲が悪くて・・・という事も考えられた。 けれど、その最後の考えは直ぐに否定される事になる。 彼は犯行の状況を詳細に説明してくれた。 詳細と言っても、そこまで複雑な状況ではなく、直ぐに説明出来る様な簡単なものだ。 「歩がパスタを茹でているときに後ろから包丁で刺した・・・私もその時に料理をしていて、サラダを作っていた。レタスとパプリカとオニオン、粉チーズ、あとクルトンを和えた簡単なサラダ。 凶器はそのときパプリカを刻んでいた包丁です。彼女が茹でる時間を計っているときに後ろから・・・」 和泉豊の証言した通り、歩はキッチンで仰向きに倒れていて、焜炉には茹でていたパスタが水を吸って鮓みたいにふやけていた。 そして、その後ろのテーブルには、皿に添えられたサラダとフレンチドレッシングが確か三つずつ置いてあった。 僕は、動機を尋ねた。すると、彼は奇妙な事を語り始めたのだ。
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