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浅草、花やしき…中からは老若男女、さまざまな人の楽しそうな声が聞こえてくる。
今回、僕が日本へ来た目的はこの花やしき地下工場を訪問視察するためだ。
……正確には、僕が行うわけじゃないんだけど。
「おや…そこに居るのはプチミント嬢じゃないか」
花やしきの中に入って少し経つと、後ろから聞き覚えのある声に僕は勢いよく振り返った。
「サニーサイドさん!一体、今までどこに行ってたんですか!?」
「いや~この花やしきはすばらしい場所だねぇ……まさにエンターテイメント!できることなら、リトルリップシアターに持って帰りたいくらいだよ」
「いや、真顔でそんなこと言われても……って、その前に僕の服を返して下さい!いつまでこの格好をしてなきゃならないんですか!?」
「まあまあ、そんなに怒るとすべて台無しになるじゃないか…女優はいかなる時でも笑顔を忘れてはいけないよ?」
笑いながら陽気に話すサニーさんに僕は深いため息を吐いた。それと同時に一郎叔父がこちらに向かってやって来た。
「あ、一郎叔父、こちらが先ほど話していた…」
「初めまして、ミスター大神…リトルリップシアター、オーナーのサニーサイドだ」
「帝国歌劇団、支配人の大神一郎です。新次郎…大河少尉とはぐれていたようですが、どうやってこちらへ?」
「はっはっは、初めは大河くんを観察していたんだがねぇ…途中で親切な人に道を教えてもらって、ここまで来たというわけさ」
「そ、そうなんですか……こんなところで立ち話も何ですので、こちらへどうぞ」
そう言って、一郎叔父とサニーさんは建物の中へ入っていった。
「……って、僕はいつになったら元の姿に戻れるんですかー!!」
END
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