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しかし数週間のうちに、彼女の心は再び揺らぎはじめた。彼女は再度入院して治療を受けたいと懇願したが、その費用を提供する基金はもはや無かった。1~2か月後、彼女は感情面において再びスタート地点に立っていた。つまり、どん底に。愛情と喪失感との間の行ったりきたりを繰り返す不安定な彼女を、友人達は我慢強く支え続けた。彼女は朗らかで、素直で、エネルギッシュで、頭のいい女性だった。しかしいつも愛情に飢え、他人の関心と助けを求めていた。その結果、彼女は疲れ果ててしまったのかもしれない。同様に少女時代に性的虐待を受けていた女性達を含む、彼女を助けてきた者全員にとって、彼女の自殺は悲劇であるとともに、狂気の沙汰でもあった。アルコールとドラッグの誘惑に溺れたことのある全ての人々と同様に、彼女もまた自分を襲う妄想に悩まされていたのは確かだが、彼女を自殺まで駆り立てるきっかけとなったのは彼女自身の妄想などではなかった。彼女が自殺したのは、自分の父親が新しく数人の子ども達と関係を持っているという事実を知ってしまったからだった。
それを考えると、子どもの頃に性的虐待を受けたことのある大人にとって最大の恐怖となるのは、他の子ども達もかつての自分のように苦しめられているのではないかと思うことなのかもしれない。
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