プロローグ

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地面が輝き始め、風が吹き乱れて桜を散らし出した。 地面の光が1ヶ所に集まり、その光が一瞬大きくなったかと思うと、そこには中学生に見える1人の少女が立っていた。 男の子は恐る恐る近づき、その少女の前に立った。 「おねえちゃん、だあれ?」 「…………」 聞こえていない、というより目の前の桜しか見えていない様子だった。少女はそのまま桜に歩み寄ろうとしたので、男の子は急いで退け、その少女の隣に並ぶように歩いた。 「ねえ、おねえちゃんだあれ?」 「…………」 「ねえってば!」 「…………」 「もういいよ、しらない!」 何を言っても反応を示さないことに嫌気が差したのか、男の子はその場に座り込んだ。 そんなことにはお構い無しに進んでいた少女は桜の木の下に着くと空を見上げた。先程まで吹いていた風も今は止んでいる。 突然、少女は胸を抑え跪いてしまった。自分の中から湧き出ようとする〈何か〉を必死に抑えているように……。
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