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午前二時三十九分、ロンドンの街角。
街角といってもほとんど崩れた建物ばかりで、ここ数年ロンドンはゴーストタウンと呼ばれていた。
割れた街灯には蛾やハエが集り、吹き抜けとなった建物からは風が唸っていた。
そんな薄暗い街の中を死に物狂いで走る男が一人。男は胸に小さなバッグを大事そうに抱え走っている。
無我夢中に走る男に対して、屋根からそれを見下ろす少年の瞳はランランと輝いていた。
少年は屋根から飛び出すと、男の行く手を阻んむ。ヒッと男の上ずった声が辺りに響いた。
「おじさん、どこ行くきー?逃げれる場所なんてないと思うんだけどー」
靴を踏みならしながら男に歩み寄る少年の顔は闇に包まれ見えずにいるが、ニヤニヤと笑っていることだけは分かった。
「もし逃げ切れたとしても、取り引きに失敗したあんたの立場は無いと思うんだけど」
「くっ……!!」
男は踵を返し走りだす。そんな彼を少年は呆れたように肩をすくめた。
男が逃げ出せると思ったその瞬間、闇から光る物が飛び出し男の足に突き刺さった。
痛そうな声をあげ倒れる男。見るとその足にはガラスの破片が刺さっていた。
闇の中で少女がニヤリと口の端を上げる。
「それともー、その中身だけでも盗んで、どこか遠い場所で一人優雅に暮らすつもりなのかなぁ?」
「た、助けてくれ……!俺は何も……!!」
「何も?」
痛みで立ち上がれない男にゆっくり近づきながら少年は言う。
闇からガラスの破片を投げた少女が出てきて、少年の隣に肩を並べた。
「なんで……なんで俺が殺されなきゃ……!俺はただ……!!」
「うーん。でもなぁ、依頼じゃそのカバンを持った奴を殺せっていうのだからさぁ」
恨むなら依頼人を恨んじゃってよ。と少年は楽しそうに笑いながら銃を男の頭に向けた。
雲から月明かりがこぼれ少年と少女の顔を照らす。
男の目が恐怖で見開かれた。
「死神…兄妹……!!」
銃声が響いた。
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