プロローグ

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『死神兄妹』 その名が知れ渡ったのはほんの半年前のこと。 口のきくひょうきん者の兄と、冷静で賢い妹。二人の名はこの世界で生きている者なら一度は聞いたことがあるほど有名だ。 多額の依頼料がいるが、受けた依頼は必ず完璧にこなし、そちら側の人間からは信頼されていた。 そして何よりも、彼らはまだ16歳と15歳という若さなのだ。 この時代、幼くして仕事をするのは分かるが殺し屋を職業とする子供は全くとして異例。世を騒がせた。 彼らの名前は皆知らず。いつ狙われるかとびくびくし暮らす者もいる。 『知ってる?昨夜ロンドンで……』 『あぁ、また出たんだってねぇ』 『若いのに、殺し屋なんてよくやるもんだ』 そんな噂が絶えない中で、買い物袋を抱えた女性がピクリと眉を動かす。 黒く長いポニーテールが小さく揺れた。 「……まったく………」 雲行きに追われ、その足は少しだけ速くなった。
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