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一時間後、マイルはムスッとした様子で職員室のソファーに座っていた。
その頬と腕にはガーゼが貼ってあった。
「あんた、ちょっとは反省しなさい!」
「いってぇ!してるっつーの!」
「どこが!これで何回目だと思ってるのっ?」
バシッと頭を叩き説教をする女性を、教師達は慌てて「あちらの生徒にも問題があったようですから」となだめる。
「今回は妹さんを助ける為にしてしまったようですから、マイルくんだけの責任ではありませんよ」
「本当にすみません。ちゃんと言い聞かせますので……」
「リサさんも、お一人で五人もお子さんを抱えていらっしゃって、大変でしょう」
何度も頭を下げ謝る女性の隣で、マイルは相変わらずムスッとしていた。
小学生の頃に両親を亡くしたマイル達にとって、この黒い髪をポニーテールにしている女性、リサは唯一の保護者だった。リサはマイルとカイナ以外にも三人の身寄りのない子供を保護している。
彼女は結構名が知れた科学者なのだが、それは最近の話。その前に何をしていたのかはマイル達にも知らされていなかった。
職員室を後にし、人のいない廊下を歩く。
「まったく。少しはおとなしくしなさい」
「だってよーリサぁ…」
「……カイナが狙われているのがムカつくのは分かるけど、暴力をふっていい理由にはならないわ」
リサがそう言えばマイルは返す言葉もなく、しかし納得のいかない表情でうつむく。
そんな彼の様子に小さくため息をつき前を見ると、見覚えのある姿が駆け寄って来るのが見えた。
それはこちらに駆け寄ると、その勢いのままマイルに抱きつく。マイルは慌てて体制を整えそれを受けとめた。
「うぉっと、」
「カイナ、どうしたの?」
リサが聞くと、彼女もマイルと同じようにムスッとした表情で、彼の腰に回した腕に力をいれた。
「…どうして兄さんが怒られないといけないの?」
「カイナ……」
「兄さんは、私を助けてくれただけじゃない」
そう言っていじけるようにマイルの肩に顔を埋める彼女に、マイルはクスッと笑い頭を撫でる。
そんな二人に苦笑しながらも微笑ましく見つめるリサは、その表情を崩し二人の肩に腕を回した。
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