3人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕は別にね、殺し屋しようが何しようが、またそれを隠そうがどうだっていいの。マイル兄さんにもカイナ姉さんにもプライベートってやつがあるだろうから」
でもね、と言って漆黒の長い髪を二つの三つ編みにした少女は救急箱を机に勢いよく置いた。
その音にマイルとカイナはびくりと肩を跳ねさせ、恐る恐る少女を見上げる。
少女は可愛らしい笑みの裏に暗い影を張り付け、二人を見下ろしていた。
「怪我をしてる事を隠していいなんて、これっぽっちも思ってないの。ねぇ?」
「ご、ごめん…アオバ…」
しゅんとうなだれる二人に怒る気も失せたのか、少女アオバは小さくため息をついて救急箱を抱えた。
カイナの右腕には包帯が巻かれていた。昨晩つけた傷を今の今まで隠して放置していたらしい。
「いつ怪我したの」
「ガラスの破片…拾った時に…」
「もう!カイナ姉さんは女の子なんだよ!?もし傷が残ったらどうするの!
それにマイル兄さんも!僕、何回も何回も言ったよ?姉さんは女の子なんだから怪我をさせないでって!」
明らかに年下であろうアオバの言葉に、反論する余地もなく二人はうなだれ小さくごめんと呟いた。
どうせ反論する言葉など見つからないのだが、どうしても言い訳もするつもりにはならなかった。
アオバの瞳が、小さく潤んでいたから。
最初のコメントを投稿しよう!