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大荷物を積み込んだ小さな荷車が大通りを通っている。
今の日本ではあまり見られない光景で、さらにはその上に当然のように黒いドレスを着た女が一人座り、荷車はなんと小さな、召し使いの格好をした女の子が引いていた。
威厳の高そうな女は長い金髪を揺らし、女の子は肩にかかる程度の黒髪をしている。
「う~む……しけているな」
女は呟いた。
実際は、町は活気がよくとてもしけているとは言いがたい。しかし彼女にとってはしけているようにしか見えないらしい。
すれ違う人々は、何かの見せ物かと振り返ったり、その場に留まったり、中には追けてくる者もいた。
彼女らは気にせず先を急いだ。
「おお、見えてきたぞ。見えるか?桜」
金髪の女は下の女の子に話し掛けた。
桜は首を小さく縦に振り──はい──と答える。
見えてきたのは資料で見る、約400メートルの小山。その一番上に大きな屋敷がたっていて、妖しい雰囲気が漂っている。
女はその雰囲気が気に入ったようで少しはしゃいで見えた。
っと、彼女は召し使いの横に飛び降りた。長いスカートがふわりと浮かぶ。
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