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無知を思い知った。
己の過去を恐れ、目の前の現実を恐れ、まだ見ぬ未来を恐れる。
臆病で、しかも足がすくんで、前に進むことなどできなかった。
しかしそれでもずっと殻にとじ込もっていたかった。外の世界なんて見たくなかった。知りたくなかった。
人間なんて大嫌いだ。
それは今でも変わらない。
でも、悪い人間ばかりではないということも知っている。
世界に悪い人間しかいないなら楽だったのに。人間を嫌いなままでいられるから。
それなのに、それなのに、優しい人間に出会ってしまったから。
この荒んだ心に手を差しのべてくれたから。
困ってしまった。
別に人間を嫌いにならなくてもいいんじゃないかと、迷いが生じてしまった。
出会いたくなんてなかった。
これまで生きてきた上での人生観が、ひっくり返されてしまうようで。
自分の中に存在していた世界そのものが、音をたてて崩壊していくようで。
全てが振り出しに戻って、自分の中身が空っぽになってしまうようで。
怖いから。過去が、現在が、未来が、怖いから。
変わることも、変わらないことも、どちらも怖い。
頭が痛くなるような板挟み。ジレンマ。
どうしてこんなことになってしまったのか。どうしてこんなに苦しまなくてはならないのか。
原因なんて、決まってる。
だから、やっぱり、人間なんて……嫌いだ。
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