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一姫二太郎、という言葉がある。
一人の姫と二人の太郎、と考える誤用が多いが、実際には一人目が姫で二人目が太郎。
つまりは、長女、長男の順で子どもが生まれたことを指す。
高校二年生、前森 輝樹(サキモリ テルキ)の家系でもそうだった。
輝樹には上に姉が一人だけいる。まさに、一姫二太郎だ。
ところでこの一姫二太郎だが、もともとは女の子が最初に生まれると子育てがしやすい、ということから出来た言葉だ。
しかしまあ、親がどれだけ子育てしやすかろうが、子ども達当人にとっては関係ない。前森家では、弟は姉の奴隷だった。
輝樹にとって、例えば使いっぱしりなど可愛いものだ。
頼まれた品が品切れで売っていなかったとか、そんな理由の時ですら理不尽にも武道の技をかけられた。最悪、単なる技かけの練習に付き合わされることもあり、輝樹はボロボロにされたのだった。
武道とは一口に言っても、なんの武道だったか輝樹はハッキリとは覚えていない。
確か、プポペペポン拳法とかなんとか、怪しげなマイナー武術だったことは間違いないのだが、一体どこでそんなものを習得してくるのかは謎だった。
まあとにもかくにも、そんな唯我独尊な姉のおかげで、輝樹の幼少時代はそれなりに暗黒時代だった。
だがしかし、それを過去の話だ、と笑い飛ばすことはできない。
なぜなら既に、第二の暗黒時代の幕が上がってしまっているのだから。
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