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『…お前は、定年まで勤務するものだと思っていたんだかな…』禿げ上がった頭を撫でながら、成田一曹が呟いた。
確かにそうだった。入隊当初は、永続勤務が希望だった。
法的には認められていないが、自衛隊は世界から見れば立派な『軍隊』である。
日本で一番過酷で厳しい仕事と言っても過言ではない。その環境で、己れを鍛え上げ、生涯を兵士として生きたかった。
ハードな教育過程を終え、中隊配属になると、状況は一変した。
希望していた『第一空挺団』の配属は叶わなかったが、最北端である北海道での配属が決まった。零下を越す極寒での訓練は、充分に俺を鍛え上げてくれるだろうと期待した。
だが…期待はあっさりと裏切られた。
勤務といえば、補給や整備にほとんどの時間を費やし、体力錬成といえば、3~5キロを走る程度。
観閲式や、その他の行事の為に、行進の訓練や段取りだけが延々と続く。
夕方、勤務が終わってから身体を鍛えようにも、新兵にはプライベートの時間等は、無いに等しかった。
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