1: 接触

5/10
前へ
/10ページ
次へ
新兵は、中隊に配属されると『営内班』といわれる小隊ごとの居室で、先輩の一等陸士や士長と寝起きを共にする事になる。 文字通りの『集団生活』だ。 毎日“半長靴”と呼ぶブーツをピカピカに磨き上げ、普段着である戦闘服にアイロンをくまなくかける。   それが終わると、先輩方のブーツを磨き、買い出し等もさせられる。その合間を縫って、メシ風呂を済ませる。 戻ってからは、居室の掃除と整頓を隅々までし、あらかた終わる頃には、あっという間に消灯時間になってしまう。   新兵の生活は、こんなものだろうと   一年を過ごした。   2年目になり、自動的に2等陸士から1等陸士に階級が上がる。   新しく新兵の2等陸士が入隊し、自分の営内班での生活は多少楽になるのだが、別の不満が生まれた。   体力を付ける為の走り込みや、格闘技の訓練等が全く足りなかった。   この頃から『北部方面隊』では精強と言われる『レンジャー』に興味があった。   レンジャー教官を勤めた事もある小隊長や、上官を見かけては情報収集をした。聞けば聞くほど、今の自分には体力が足りない。   来年度、士長になれば班長や小隊長の推薦で『レンジャー』に参加出来る。   それまでに体力の向上を計りたいが、後輩の指導やら、本来の任務である迫撃砲の専門過程に時間を取られ、トレーニングの時間はほとんど取れなかった。   そんな折り、定期訓練である実弾演習で、事件は起きた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加