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最初に異変に気付いたのは、同期で一等陸士の樋口だった。樋口は同じ小隊で、2番砲の弾薬手をしていた。今回に限り、小隊の通信手も兼任していた。
樋口が俺に手招きしている。
『どうした?』
『3番砲の矢崎士長から射撃準備完了の連絡がないんだ』顔に妙な緊張が浮かんでいる。
『新米が何かミスでもしたんだろ?』初めての通信手で緊張しているだけだろうと思った。
『いや、少し様子がおかしいんだ…』
『応答確認してみろよ?』『こちら2番、樋口。3番、準備良しか?送れ』
応答が無かった。
『故障か?こりゃ小隊長にどやされ…』言い終わらないうちに、30m程離れた3番砲の位置から花火の様な音が聞こえた。
聞き間違えでなければ、花火等ではなく小銃の発砲音だった。
樋口も俺も、顔を見合わせたまま数秒は動けなかった。何が起きてるのか理解出来なかったからだ。
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