3. 転機

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キ―ン… コ―ン… カ―ン… コ―ン… チャイムが鳴る。 下校時間になった。 僕はいつものように、 僕の靴を 【間違えて履いて帰った人】の 靴を履いて帰る。 正門を出ようとした その時だった。 後方から誰かが 僕の名前を呼ぶ。 「小崎くーん!! 待って待って待って!!」 沙原美歌だった。 「はあ… やっと追い付いた…。 小崎くん、 スタスタ帰っちゃうんだもん…。」 「あの… 僕に…何か…用ですか?」 「一緒に帰らない?」 何でこの人は こんなに積極的なんだろう? 僕はこの人に 疑問を抱いた。 「あの… 何で僕に… 声かけてくれるん…ですか?」 「何でって… まだ小崎くんの事 何も知らないから!」 「は、はあ…」 「だってまだ 一度もまともな 会話してないし…。」 「…あのー…」 「ん、何?」 「その… 僕と…関わらない方が 良いですよ?」 「え、何で?」 「そ、それは―…」 僕の言葉を 遮るかのように 集団グループが 沙原美歌に声をかけてきた。 「ミカちゃん、 今からさ 皆で街に行こうよ!」 「お洒落なカフェがあるんだ~!」 「え…いや…でも… ほら、小崎くんも 一緒に行こ?」 「いーよいーよ! あいつは誘わなくて!」 「そーそー! 私たちだけで行こ!」 「どーせ 金無いんだからさ!」 「あ、駅前のゲーセンに 新しいプリ機が あるんだってー!!」 「マジ!? いこいこー!!」 「ほらっ ミカちゃんも早く早く!!」 「で、でも…」 僕の方を ちらちらと見る。 「さ…さよならっ…」 そう言うと 僕はその場から そそくさと逃げた。 僕が行ったって どうしようもない。 わかってるからこそ 余計に辛くて 悲しかった。 考えたくないから 家まで 全速力で走って帰った。  
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