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全速力で走ったおかげで
いつもより断然早く
家に着いた。
「はあ……はあ……
…ただいま。」
「おかえり。」
母親の声が返ってきた。
僕は、
自分を落ち着かせるために
台所に行き、
成分を出しきったようなお茶の葉から
更に出したくらいの
かなり薄いお茶を
数杯飲んだ。
「ふうー…」
と一息ついた時
後ろから母が
「何かあったの?」
と、声をかけてきた。
「いや…
何でもないよ…。」
「…そう。」
「あれ? 賀奈は?」
「そろそろ帰ってくるんじゃない?」
「ふーん」
「お母さん
まだ内職の続きやらないと…」
「うん。」
賀奈は
僕の妹だ。
僕とは
真反対の性格だ。
気が強くて
明るくて…。
母親が内職をしている中、
僕は静かに本を読んでいた。
「また本ばっか読んでるのー?」
「わ…
びっくりした…。
いつ帰ったのさ?」
「気付かなかったわけ?
そんなんじゃ
彼女もできないよ?」
「…いいよ、別に…。」
「男らしくないなー…。」
「…………。」
「ねえ?
私と付き合う?
男にしてあげるよ!」
「なっ…
な、何言ってんのさ!?
そ、そ、そんな事
出来るわけな……」
「冗談に決まってんでしょ。
くだらない事言ってないで
早くお風呂入るよ。」
「…はは…は…」
ちょっと焦った。
「あの性格は
誰に似たんだかねえ…」
と、母親が呟きながら
風呂場に向かった。
僕も本に栞を挟み
風呂場に向かった。
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