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初めて四人で出かけてからもう半年がたつのか。
あれから何度も四人で出かけたけど俺のスタンスは代わらない。
裕也の背中を押すために障害になるものは出来るだけ排除するだけ。
その方法として抱いた偽物の感情は絶大な効果をもっていた。
俺が空に好意をもっているフリをし続けたから、空にとって一途に想っているように印象つけることができたと思う。
いや、確実にそうだ。
今では、初めて会った時より空の態度は大分砕けているみたいだし、軽くは話せない事だって話すほど俺を信頼してきているのがわかる。
もう四人で出かけても裕也と美佳、俺と空のダブルデート状態のように自然に分かれているしな。
もう、これは成功したんじゃないか……?
俺が1番だとは言わない。
でも裕也と同じくらいの位置にはいるのかも。
「どうかした?」って空が俺を隣から見上げてくるけれど「なんでもないよ」といってごまかした。
「そっか」と言ってはいるけど、あの顔は納得してないよな……。
付き合いだって多くなってるから多少の考えは解るようになったのか。
フリを続けてはいるけど、隠せていないものだってあるのか。
かく言う俺も空の事が段々理解できていた。
暗いのではなく人見知りが激しいだけということ、本を読む事が好きで頭がいいこと、でもなかなか口に出せないこと。
そのくせ信頼した相手にはとことん自分を許して無防備になったり、頼ったり甘えたりも多い。
なにより小柄な身長から見上げて軽く微笑みを向けてくれた時の表情がかわいいこと……。
って、俺は何言ってんだ?
これはフリ、フリなんだぞ?
元々悪意から抱いた偽りの感情、か。
ははっ、ここまで無意識にそれを持つなんて俺も堕ちるとこまで堕ちたな。
後は裕也が美佳と上手く付き合えたら俺の勝ちでゲーム終了だ。
そう、ゲームが終わればこんな歪んだ関係ももう終わりになるんだ……。
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