息子の夢

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息子は高校入学後直ぐ、登校拒否になった。 家から一歩も出ないどころか自室に籠りきりだ。 まったく、何が気にくわないと言うのだ。中学までこんなことはなかったのに。 息子には普通に進学して普通に社会人となり、普通にサラリーマンをしてもらえればいいと思っていた。 それもこれも、妻の責任だ。 結婚前、私は仕事を、妻は家事をそれぞれ一所懸命頑張ると誓いあった。 子育ては妻の担当だ。それなのにこのありさま。 最近はめっきり妻と話さなくなった。 話したとしても、それは会話ではなく、ただの口喧嘩だ。 ある日、駅で小学校時代の息子の友達に出会った。 その子はポケモントレーナーになっていた。 10歳で街を旅立ってから5年。 もう幼い子供ではなく、立派なトレーナーだった。 彼と別れたあと、私は息子が小学1年生の時に書いた作文を思い出していた。 タイトルは、将来の夢。 家に着くと、それを探した。 息子が幼稚園から小学生のあいだに書いた絵や作文は妻が全部整理し、残しているはずだ。 妻はタンスの一番下に息子のアルバムや自分のへそくりを入れている。そこに作文もあるはずだ。 引き出しの中にアルバムはあったがへそくりはなかった。 何か買ったようだ。 しかし、アルバムの隣には昔お歳暮でもらったおかしの缶が入っていた。 蓋を開けると、四角い缶にぴったりというかギリギリのサイズの画用紙が目に止まった。 3つの大きな丸と、小さな2つの丸。(丸とは言ったがかなりいびつだ) それらの周りを囲むように様々な色が置かれている。(簡単に言うとぐしゃぐしゃがいっぱいだ) この絵には、下の方にタイトルが書いてあった。 「ポケモンとぼくと妹と弟とおかあさんとおとうさん」 息子が幼稚園の年少のときに書いたものだ。 一人っ子の息子は、誕生日プレゼントを聞けば妹が欲しいとか、クリスマスプレゼントを聞けば弟が欲しいと答えていた。これはその頃の絵だ。 その後、作文は直ぐに見つかった。
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