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俺の服は、全部兄貴のおさがりだ。服以外も全部。
昔からそうだった。
俺と兄貴は10歳以上歳がはなれている。
理由は、兄貴がものすごく愛されていたからだ。
俺が生まれる前、一人っ子だった兄貴は、特に母さんに愛されて育った。
溺愛と言っていい。
そんな兄貴が10歳のとき、ポケモントレーナーになるため旅立った。
兄貴がすべてみたいな母さんは、兄貴が出て行ってしまい、まるで抜け殻のようになってしまったそうだ。
唯一、兄貴から連絡のあった時だけ少し元気になるくらいだった。
しばらくしたある日、父さんが事故に遭い病院に入院した。
そのときの母さんは父さんの身の回りの世話を甲斐甲斐しくこなしていた。
そのうち、10年間ほぼ肩書きだけの夫婦と化していた二人に恋の炎が灯ったとかなんとか。
恋愛感情が戻り、再び恋人同士戻った気がしたとか……。
そんな感じで父さんの入院を切っ掛けに俺は生まれた。
母さんは兄貴の昔使っていたものを大事にとっていた。
俺が成長して、仕舞っていた服やランドセルなんかを取り出すたび、母さんは兄貴の話しをした。
その頃には、兄貴からの連絡は一切なくなっていた。
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