3人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は覚悟していたのか、慌てず騒がず、ミサコと離れ
「ハイ、武藤です」
と答えた。
「半年前の借家殺人事件の犯人として逮捕するから」
「ハイ、スイマセン。お手数かけます」
武藤は両手を差し出した。
「ここへくれば捕まると、解ってただろうに」
菅野刑事がそう言うと
「でも、捕まる前に、どうしても、ミサコの顔を見ておきたかった」
武藤は下を向き、涙を浮かべた。
その時、菅野刑事が、あることに気付いた。
「彼女、お腹、大きいんじゃないか」
ミサコは無言で頷いた。
「え、そうなのか」
武藤が振り向く。
ミサコは再度頷き
「六ヶ月よ」
「俺の子か?」
「当たり前じゃないの」
「そうか・・・一度、自分の子を抱きしめてやりたかった・・・」
武藤は刑事達の方を向き直り
「それではお願いします」
と言った。
すると、石狩警部は、あごをスリスリしながら考えていたが
「生まれて来る子供を、抱いてやったらいいじゃないか」
と言う。
「え、しかし、どうやって」
戸惑う武藤。
「今日の逮捕は無しだ。一年後、また来る」
「えーっ」
最初のコメントを投稿しよう!