恩情

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今度は菅野が驚く。 「ど、どーしたんスか」 「良いじゃないか。武藤に子供を抱かしてからの逮捕でも、遅くはないだろう。もう、逃げないよな、武藤」 「そ、そんな、逃げるなんて・・・」 「逮捕は一年後だ。籍も、ちゃんと入れてやれよ。帰るぞ、菅野刑事」 「で、でも」 戸惑う菅野に 「今日は武藤は現れなかった。それでいいじゃないか。さっ、帰るぞ」 と、車に乗り込んだ。 仕方がないので、菅野刑事も助手席に乗り込み、車は、去って行った。 武藤とミサコは、車が見えなくなるまで、頭を下げていた。 そして一年後。 石狩、菅野両刑事は、再度、アパートを訪ねた。 「久しぶりだな、武藤。どうだい?」 「ハイ。おかげさまで、無事出産しました」 武藤は奥の部屋へ向かって 「おーい」 と声をかけると、ミサコが赤ちゃんを抱いて出て来て、武藤の隣に座った。 「刑事さん、本当にありがとうございました」 武藤とミサコは二人して、頭を下げた。 石狩は手で制し 「男の子かい。かわいいじゃないか。名前は?」
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