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「そんなこと…初めて言われた」 きっと、私今、顔が真っ赤だ。自分でもわかるくらい顔の体温が上がっているのを感じた 「ありがとう…」 でも、ほめてくれるのは心からうれしかった 自分の絵を誰かにほめられたのなんて、小学生のときお母さんに褒められて以来だったし 田中君も、優しく笑ってしまった 私は、また顔が熱くなって目を逸らしてしまった 「で、でも、私がこんなの描いてたなんて誰にも言わないでね?」 「え?」 私が言うと、田中君はそんな素っ頓狂な声を上げた おそるおそる視線を戻してみる。見るからに不思議そうな表情をしている 「なんで?…いや、別に言わないけどさ。こんなに上手いのに」 …うれしいな。本当にうれしい こんなこと言ってもらえるなんて でも… 「は、恥ずかしいから…」 さすがに高校生にもなって、こんな絵を描いているなんてほかの人には知られたくない 友達とか少ないし、たぶんもうすでにクラスメイトたちには暗い人だとか思われちゃってると思うけど 「そうかなぁ」 「あ」 ふとした隙に、再びスケッチブックを奪われた そして再びそれに目を通し始めた田中君に私はもう抵抗しようとか、そんな気持ちには一切ならなかった
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