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「私…その…明るくないし、友達も少ないし…。こんな絵描いてるなんて知られたら、余計に暗い子だって思われちゃうし…」
なんで、今まであまり接したことのない人に、こんなこと言ってるんだろう
自分でも不思議に思いながらも、私は思っていることを素直に吐き出した
「暗くなんかないぞ!」
すると、田中君はその一言で、私の言葉を覆ってしまった
「え?」
聞き返しながら顔を上げると、なぜだか田中君はほんの少しだけ目を吊り上げていた
なんとなく怒っているようにも見えた。でも、それに恐怖心は沸いてこなかった
田中君は、少し声を張り上げながら言う
「何で絵描いてるからって暗くなるんだよ。こんなに明るい絵描ける人が暗いわけないじゃん」
どきん
また胸がはねる
「別に人に見せたりするかどうかは山下の自由だけどさ。もっと自信もって堂々と描いたら良いのに。もったいないよ!」
……勘弁してよ
うれしすぎて、涙が出ちゃいそうになる
だって、それは思いもよらない言葉なんかじゃなくて
きっと、私がずっとずっと
心から誰かに言ってもらいたい言葉だったから
「俺は山下の絵、好きになったよ」
私は
そのとき白い歯をこぼしながらそう言ってくれた田中君の表情を
2年間忘れることができなかった
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