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「俺の夢はさ、小説家になることなんだよ」
恥ずかしくて、言った瞬間、顔中がやけどしそうになるくらい熱くなってしまった
しかし、山下はひとつも表情を動かさなかった。その振る舞いが、このとき俺に勇気を与えてくれたのは言うまでもない
「でもさ、やっぱり山下と同じで、自分の夢に自信が持てなくて、友達にも親にも言ってないんだよ」
麻生なんかに言った日にゃ、どんなこと言われて馬鹿にされるかわかったもんじゃないしな
別にあいつを信頼していないわけじゃないんだ。絶対的に自信がないんだ
何せ、小説家だ。俺は知っている。どれだけの人がその夢に挑戦し、そして破れてきたかを
でも…
「だけど…やっぱり本気で目指すなら、ちゃんと宣言しないとな」
「うん…」
俺は笑った。照れ隠しなんかじゃなくて、心からの笑顔で
彼女も、同じような表情を浮かべてくれた
「山下は漫画家。俺は小説家になるんだ」
「うん」
少し前なら、こんな恥ずかしいこと絶対に言えてない
「お互い頑張ろう!」
「うん!」
でも、今はそれほど恥ずかしくはない
自信ができたわけではない。そう、それはきっと…
目の前にいる女の子が…
「山下!」
「………?」
山下の目を、じっと見つめた
山下も黙って見つめ返してきた。真剣な目つきで
俺たちは必然的に見つめあう形になった
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