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「はぁ……」
夜空を見ながら溜め息一つ。
星や月はあんなに輝いているのに、俺の人生は何時になったら輝き始めるのか。
リストラ。
彼の脳裏にくっきりと浮かび上がる。
一ヶ月前にあまり親しくない上司に突然言われた。
「言いにくいんだけど……」
この一言で全てが分かった気がした。
だから、もう言わないで欲しかった。
出来る事なら上司の口を手で覆いたかった。
それ以上俺を奪って欲しく無かった。
でも、そんな勇気もなくて。
「……リストラになったから……」
その瞬間。俺の中で全てが崩れ去る音がした。
「……はい……」
俺の人生にはこれといって楽しみは無かったから、全てをこの会社に注ぎ込んだつもりだった。
仕事は辛かったけど、何かやってる自分が嫌いじゃ無かった。
でもその自分もたった一言で、魔法でもかけられた様に居なくなってしまった。
それからは、会社に行きながら新しい仕事先を探したが、不況のせいで仕事が見つからず、
そして、今日。
会社の机には俺の荷物は無くなった。
新たな就職先が見付からない焦りからか夜も眠れず、俺は気分を変えようと外に出た。
夜風が優しく吹いてきて、少しだけ心が落ち着いた。
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