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さわらぬ神に祟りなしとは、本当にその通りだと思う。
彼女が席を立ち上がり、人混みを割いて俺の方へと向かってきた。
俺はどう反応するべきか、頭の中でいくつか案を導き出す。
まず一つ、トイレへ行くふりをしてこの場を凌ぐ。
二つ目、人違いのふりをする。
三つ目、ただ知らんぷりを決め、彼女が話しかけてくるまで目を合わせない。
俺がただの一生徒で、彼女の事を遠目で眺めているだけの小心者ならば、彼女は俺に話しかけてくることはまずないだろう。
だが今は事情が違う。
昨日の夜、あの手紙を読んでしまった俺は、多分間違いなく彼女が俺に話しかけてくるという自信があった。
それは多分彼女も知ってる事だろう。
じゃなかったら彼女は俺に近付いてなど来ない。
それ以前に、この学校にも来てないし、このクラスに足を踏み入れる事もないだろう。
「あんた、真柴宗一だよね?」
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