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お膳の上に広がるのは、二人で食べるには多すぎるくらいのおかずが並んでいた。
「いやいや、茜さんが作った料理が不味い訳ないよ。ありがとうね、茜さん」
「いえ…光栄です…。さ、冷めない内にどうぞ」
茜さんは少し頬を赤らめた。
年上だけど、そんな純粋な所も可愛い。
「じゃあ、いただこうかな。いただきまーす!」
茜さんの作る料理は本当に美味しい。
母さんの味はもう思い出せない。
母さんは仕事で忙しく、家にいない事が多かったから、俺はあまり『おふくろの味』というものを知らないのだ。
「うん!うまい!すごくうまいよ!」
「そうですか!?良かったぁ…。そう言って貰えると嬉しいです」
そんな二人だけの食卓、もう慣れたものだ。
一人だったらどれだけ寂しいんだろうか。
いつか茜さんもいなくなってしまうのだろう。
そう思うと寂しくて仕方がない。
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