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「チュンチュン、チュンチュン。」
小鳥がさえずっている。
気持ちのいい朝だ。
僕の名はラステル。どこにでもいる普通の男の子だ。年は16歳。
母親は、僕が3歳の時に病気で死んでしまった。
父親は、僕が5歳の時に、突然家を出ていった。
そんなこんなで、今は一人で暮らしている。
僕の家は、街から遠く離れた森の奥にある。
なので、街の人はめったにここへ来ない。
来るとすれば、珍しいキノコを目当てにして来るマニアたちや、自殺しにくる人たちばかりだ。
そんなこともあって、人間の友達はいない。
しかし、森の中にはたくさんの友達がいる。
最近仲良くなったシカの親子や、かなり前からいたキツネなど色々な種類の動物と友達だ。
でも、友達は動物ばかりではない。森に生えている木とも友達だ。
友達はたくさんいるが、一番の友達は、サルのジャック。ジャックは、僕の父親が出ていった日に出会った。僕たちはすぐに意気投合した。
この森には、樹齢二千年のカヤの木がある。
なんと、そのカヤの木は人間の言葉を話せるのだ。
この森には、そのカヤの木以外に言葉を話せる者がいない。だからラステルは毎日のようにカヤの木に会いに行った。
「やぁ元気かい?」と僕がいつものように問いかけると、
「元気よ~!」と返事が返ってきた。しかし、なにかいつもと様子が違う。
「どうしたの?いつもと様子が違うけど」
と僕が聞くと、こう返事が返ってきた。
「あなたは近いうちに、この森を出ていくことになる。あなたには…」
そういうと、カヤの木はうつむいて話してくれなくなった。
「なんだ、へんなの~。」そう言って僕は家へ帰った。
このとき僕は、今後自分にふりかかる試練を知るよしもなかった。
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