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「お花をお探しですか?」
「いや、花屋を探してるんだ」
男は花から手を放し、はらはらと床に落ちた花を踏みつけた。
「俺はカルボナーラファミリーの人間だ。お前の親父はドンのとこに顔を出してない。ここ3ヶ月、ドンへの金が支払われてないんだ」
少年は男を見た。
「そんなはずは」
「恨むんなら親父を恨むんだな」
男が合図をすると、背広姿の男たちが現れ、目につくものを片っ端からなぎ倒し、踏みつけ始めた。
「止めてください花が……花達が」
少年は男の足に掴みかかった。
「ちっ。おいこの餓鬼を黙らせろ!」
「はい」
「せっかくの俺の背広が汚れちまった」
男は背広についた血を店の柱にこすりつけた。
「俺を誰だと思ってやがる。カルボナーラファミリーのジョルジオ様だぞ」
次の日、オーエンとデリに殴られ、顔を腫らしたテッシオがリコのお店へやって来ると、ぐちゃぐちゃになった店内でもっとひどく顔を腫らしたリコがいた。
「大丈夫、リコ! 大変だ」
「テッシオ……どうしたんだ?」
「オーエンとデリのとこへ行くって約束だったから、でもそれどころじゃない」
「えっ? そうか。ごめん」
テッシオは首を振った。
「そんなこといいよ、リコの方が大変じゃないか。警察呼ばなきゃ」
「駄目だよ」リコは今にも走りだしそうなテッシオを止めた。
「カルボナーラファミリーの仕業なんだ。警察なんて動いちゃくれない」
「ええっ! カルボナーラの! お父さんは?」
「父さん……帰ってこなかった」
リコの目には涙が浮かんでいた。
「リコ……、とりあえずうちにきなよ」
「ありがとうテッシオ。でもいいよ。片付けながら父さんを待つよ」
「手伝うよ」
「ごめん。一人でやりたいんだ」
テッシオは困った表情をした。
「何かしたいんだ」
「また、頼むよ。でも今は」
「分かった。また明日くるね」
「うん。ありがとう」そう言ってリコはテッシオをしっかり見た。
「色々ありがとう。じゃあ、またね」
「う、うん。またね」
それが二人の永遠の別れとなった。
次の日、胸に息子が育てた花を大事そうに抱く、ベンチオ=レンチーニの死体が発見された。
テッシオはリコの元へと走ったが、リコは遠い親戚に引き取られ、この町を去っていったあとだった。
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