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うん、動揺したから言い間違ったわけでもないです。
「ううん、きょっぺの顔がすけべぇになってるから、我慢する。それに、これから学校だし」
「それを言うなよ……」
夏と言えば海。海と言えば女子の水着。女子の水着と言えば我が青春にしてロマンス。
だというのに、一生に一回しかない、高二の夏休みの初日、俺は先立って行われた期末試験でいつものように赤点を取ってしまったわけであり、その補習に学校に向かっているのだった。こんな青春、絶対に間違ってる。
「それを認めなきゃ、人は前に進めないんだぜ?」
「ううん」と、俺は言うのをためらってから、俺とあかりの仲だし、そんな気を使うまでもないなと思い直して、「そんな恰好をしてるやつに、前に進むとか言われてもね」
あかりの頭部を見ながら、考える。
川中あかり。俺の、愛すべき馬鹿な幼馴染の1人である。俺と一緒に補習常連だから勘違いされやすいが、頭の良さは図抜けて良い。悪いのは英語だけだ。それ以外は学年でもトップクラスである。割り箸をきれいに割るのがすごく得意な女の子。茶髪のショートカット、巨乳で、可愛くはある。
ただ、感性がすこ――しだけ、人とは違っている。それが残念な方向かそうでないのかは、人によるだろう。
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