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「そんな恰好? どういうことだ? ぼくはまっとうな恰好をしているつもりだ」
うん、正しい言い方だな。確かに「つもり」でしかない。ほんとにね。
「えーと」あかりの頭部をみて、考える。外すわけにはいかない。間違えたら大変なことになる。前に一度間違えたときのことは、今でも恐怖の象徴になっている。「今日は……メイドキャップ?」
「うん、そうなんだぜ? ふへっ、かわいいでしょ?」
あかりが浮かべた愛くるしい聖母みたいな微笑に胸がきゅん、とくるよりも、メイドキャップで正解だったことに安堵する方に忙しかった。よかった……本当によかった……。
「まあ、昨日の強盗フルフェイスマスク(命名、俺)に比べたら、まだ常識の範囲内ではあるかな」あくまで、昨日と比べたら、だけど。
川中あかりの困った感性。それは、頭に何かをつけることが好きだということである。野球帽やキャスケット、カチューシャ、猫耳、馬の頭部、ナース帽、ベレー帽など、とりあえず頭につけるものなら、あかりは何でもつけて日々の生活を送っている。
それが今日はメイドキャップなだけだった。
これは授業中であっても変わらない。城南高校だから認められてるのだろう。普通は認められない。それは本人も承知しているようで、入学式とかそういったものに参加するときはかぶらないでいるけど。
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