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ない胸を必死に張って言った。とんでもない勘違いだ。
「妄想もたいがいにしてくれ。それと、俺は腹が減ってる。割り箸を返せ」
こういった変態は構ってやればどんどんつけあがる。幼馴染のうち一人がそうだから、こいつもそうに違いない。
「またまた強がっちゃって、かわいいんだから! でも、すべてはこの割り箸たちが物語っているの!」
さっきも似たようなことを聞いたな。女のセリフを無視して黙って見ていると、そいつはずいっと割り箸を突き出してきた。
「うお」いきなりのことでびっくりした俺はのけぞる。
「見て、こっちが君の割り箸。左側が厚く割れてる。で、こっちがわたしの。右側が厚く割れてる。しかも、重ねるとまったく同じように割れてるの。だから、君はわたしのことが好きで、わたしは君に好かれているの!」
「はあ?」
漫画なら、きっと今の俺の頭上に大量のクエスチョンマークがこれでもかってくらい書かれること間違いなしだ。
それくらい、俺の割り箸を握りしめたアホ女の言いたいことはおかしいのだ。いくら城南高校史上、最大級のアホが集まる我が学年といえど、限度ってもんがある。
まあ、俺みたいに割り箸にすべての青春と恋をゆだねた真人間と比べたら、この高校に通うほとんど全ての生徒が限度を越したアホになってしまうのはおいといて、だが。
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