ことの起こりはこうだった

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「ありゃ、知らない? 割り箸占いのこと」  きょとんとした顔で尋ねてくる。割れ方で片想いとか両想いとかのやつかな? 「そう、それ!」 「マジか……」  思ってもみない肯定に、俺は本気でショックを受けた。こんなやつが考えてることを一発で当てちゃうなんて……。泣けてくるね。 「割り箸を割ったとき、左側が厚く割れたとき、それは片想いをしてる証! 反対に右が厚く割れたときは片想いをされてる証! きれいに割れたときは、いやん、嬉しいね、両想いの証なんだよ!」  頼んでもないのに、割り箸占いとやらの説明が始まった。その説明に俺は首をひねる。そうだっけ……? 俺のとぼしい記憶では、左右が逆だったように思うが、こんなに自信満々に語っていやがるのだ、俺の思い違いだろう。  いや、どっちにしろ、俺は占いなど大嫌いであり、信じてもいないので真偽のほどなどどちらでも構わない。よって、俺は割り箸をひったくり、はっきり告げてやる。 「俺は占いなんか信じてない。それに、俺はおまえのことなんかなんとも思っちゃいねえ」  そこで、俺は会話を打ち切り、弁当を持ってトイレに行くことにした。静かに飯が食いてぇ時にはそこがベストなのである。  心躍る高二夏休みが始まる二日前、俺と城中沙耶は初めて言葉を交わした。これがこの先に起こるさまざまなことの端緒になる。いろんな出会いが待ち受ける長い夏の始まりだった――
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