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『ピピッ』
温もりを感じない無機質な音。
妙に静かなこの空間で、【CLOCK】の時を刻む音が馬鹿でかく聞こえる。
「ま〰だ〰?」
待ち切ない紫乃がスカートのポケットをジャラジャラと打ち鳴らす。
「…!」
選択肢が一つしかない…。
携帯画面に映し出された内容は、選択というより結果に近かった。
死んだら勝ちのこのゲーム。
今この状況で〝指〟以外の宣告をする者がはたしているだろうか。
彼が強いられているのは「〝選択〟せずに〝宣告〟すればいい」という単純な作業。
「どうしたの~?黙っちゃってさあ。
右目痛いの~?
速くしないと時間ないよ」
五月蝿い。
座り込んでポケットの中身を一つずつ取り出す紫乃の姿が左目にだけ映る。
丁寧に床に並んでいく凶器。
果物ナイフにカッターナイフ、サバイバルナイフにバタフライナイフ、小さめの包丁、針、釘、ホッチキス、ロープ、ピアノ線…、剣山まである。
今までいったいどこに収納されていたのかと疑問に思ってしまう夥しい量の凶器たち。
人の体を傷付けるものならなんでも入っていそうだ。
彼女はこの中のどれを使いって自殺したのだろうか。
考えただけで全身に鳥肌が立つ。
その後に並べられる鉛筆やシャーペンが可愛そうなくらい不気味なモノが揃っていた。
軽快な鼻歌が聞こえる。
紫乃は大量のストラップが付いた携帯を開いたままにして床に置き、ひたすら凶器を楽しそうに並べ続けた。
ジャラジャラジャラ…―
もしゲーム中じゃなかったらポケットを探る手もズタズタになっていることだろう。
まあ、そんなことより恐ろしいのは凶器全てに 渇いた黒い血が付いているところか…。
「ねぇ…」
並べ終わった紫乃が迷惑そうな顔をしてこちらを見ている。
「もうすぐ…1分切るよ?」
吹雪はフゥッとため息をつくと、【神】からのメールに蟠りを感じながらも 選択肢が一つしかない〝宣告〟を紫に向かって告げた。
「〝指〟」
声の振動が伝わって右目があった部分が酷く痛む。
LEVEL2終了期限まで残り18回。
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