【LEVEL2】

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肺か骨……。 どちらを圧縮(センコク)してもあいつは死ぬだろう。 あまりに不条理なこの〝問い掛け〟。 自分に全く無益な選択でも、今の私の怒りを抑えるには都合がいい。 むしろ足りないくらいだ。 激痛が快楽に、快楽が怒りに変わっていく。 こんなことで冷静さを欠く私じゃないはずなのに…。 一瞬とはいえ、敗北を覚悟した恐怖は十分私の自尊心を傷つけた。 だからあいつ、佐藤吹雪にはそれ相応の痛みをもって償ってもらおう。 それに全く〝無益〟とも言い切れない。 体を圧縮されて死に至る〝結果〟は、十分に彼の頭に刻み込まれる。 恐怖を、植え付けてやるんだ。 これから私に〝宣告〟される度にフラッシュバックする恐怖。 その恐怖は人間の生命本能によって〝生きたい〟という反射に変わっていく。 それは確実に私を勝利へと導いてくれるはず。 どっちを宣告しよう。 肺だと息ができなくなる。 じゃあ骨だったら…。 多分どっちを選んでもこいつは即死する。 だったら より情けなく、 より格好悪く、 より痛く、 より醜くく、 よりグチャグチャに… ぶっ殺してやるッ!!!!!!!!! 紫は赤い床に大の字になると、四方へ赤い血を撒き散らしながら大きく息を吸い込み、〝宣告〟した。 「〝骨〟ッ!!!!!」 「!!?」 真白な砕けた奥歯と、赤黒い血が少し床に飛び散る。 オオオオオオオオオオオオオオオッ 床に倒れる〝狂人〟が放つ威圧。 それは十分に この〝異常な状況〟を体現していた。 「死ね!!!死んじゃえ!!!キャハハハハハハハハハッ!!!」 宣告から破壊までの数秒のタイムラグの間、紫の笑い声が絶えず甲高く響く。 その雑音の中で 吹雪は落胆のため息を漏らすと、 紫に向かって、笑い声にちょうど掻き消されるような小さな声で吐き捨てた。 「 く だ ら な い 」 オオオッ- 紫のそれとは違う静かな〝威圧〟に一瞬、場の空気が凍りつく。 「え?」 吹雪が紫に軽蔑の眼差しを向けている。 氷のように重く冷たい吹雪の瞳が、理性を失った彼女の霞んだ瞳に映る。 それからすぐに、彼という存在が〝者〟から〝物〟へと変わった。 『グシャアッッ…』 LEVEL2終了期限まで残り17回。
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