香川 勝

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時は約三ヶ月前、勝が三年生になって一ヶ月半が過ぎた五月に遡る 「先週にやった中間試験のテストを返すから、名前を呼ばれた順に取りに来い」 教壇の上に立った教師がおもむろにカバンからテストの束を取り出す そしてそれを待っていたかのように、生徒もにわかに騒ぎ出した 高校三年生ともなれば定期テストといえども、重みが変わってくる。特に受験を推薦で受けるグループにとっては命に代わる程の問題になる 香川勝も推薦組であり、大学進学を希望している一人でもある 「香川~取りに来い」 答案を受け取り席に着く 「むっ…これは…」 「なになに?どーしたの、どれどれ…………」 隣の席の男子生徒が突然答案を覗きこんできた 「おわっ!?勝手に見るなよ高知(たかとも)」 「まあまあそんなに怒らないでよ勝君。僕のも見せてあげるからさ」 「けっ、相変わらず白々しいなお前は。どうせ良い点取ってるんだろうが」 「ハハッバレた?」 「ったく…嫌みかっつうの」 「たまたまだよたまたま。家庭教師の先生から習った問題がうまく出ただけだよ」 クスクスと笑う高知の笑顔には、純粋な好奇心しか浮かんでいない (ホントコイツって俺が嫌になるくらい純心なんだよな) 勝は色素の薄い高知の顔を見ながら、そう思うのだった
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