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「…なぁ」
俺が呼び掛けると三人の肩が同時に跳ねる。
息だけはピッタリらしい。
これからどうするか悩んでいた矢先、予鈴のチャイムが鳴る。
……戻るか。
「とりあえず、今日はこんくらいにしといてやるよ」
そう言うと三人は安堵したのか胸を撫で下ろす。
「ただ、」
もう一度眼に力を込める。
「わかってんだろうな?」
あえて口調はゆったりさせる。
当然三人とも必死に何度も頷く。
「今回、お前らはあの女子に告る為に呼び出した」
「……」
三人の動きが止まる。
「…呼び出した」
頷く。
「だから俺がここに来たのは勘違いだ」
頷く。
「お前らはあの女子にフラれたショックで今から帰る」
頷く。
「んで、俺は空気過ぎて逆に浮いてる真面目な生徒だ」
頷いた。
「よし、わかったらさっさと行け。
明日から俺には絶対に話しかけんな。
……まだ学校に来たいのならな」
そんなつもりもないのだが、とりあえず凄んでおく。
こんな奴らを殴った為に退学とかは絶対に御免だ。
「じゃ」
軽く右手を挙げて屋上を後にする。
「はぁ、最悪だ」
思わず呟いてしまう。
この昼休みで、俺の真面目な生徒として三年間過ごすという計画は水泡と帰してしまった。
「最悪だ」
教室に戻る道すがら、もう一度呟きながらクラスの奴らに質問される前にどうやってあの女子と話を合わせるかを、俺は必死に考えるのだった。
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