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「や、止めてください!!」
可愛らしい女子の声だった。
発信源は思ったよりも近かった。
俺の机から席二つ分程前の位置に、女子生徒が一人。
両手を握りしめながら胸の前にして、少し俯きながら震えている。
なんてベタな展開だろうか。
一人の普通の男子生徒が不良に絡まれ、そしてそれを真面目な女子生徒が勇気を振り絞って止めようとする。
その後は…
「なんだよ如月ぃ、文句あんのかよ?」
「そ、それは…」
その女子生徒が標的になってしまう。
それでも、マンガやドラマとかだったら主人公が颯爽と現れて女子生徒を助けて恋に落ちる、ってとこだろう。
しかしこの場にそんな都合のいいやつはいない。
「あれか?お前こいつのこと好きなのか?」
ニヤニヤしながら赤が尋ねる。
「ち、違います。
た、ただ、少し酷すぎると思ったから…」
最初の否定ははっきりしていたが、次第に尻すぼみになっていく女子生徒。
それでも地味に振られてしまった男子生徒には、出来るなら合掌したい気分だ。
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