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「それより知ってる?」
「ん?」
「転校生の話」
「転校生?」
ふと幸の顔に疑問をぶつけると幸はどや顔で腕組みをして笑っていた。どうやら私が知らない事を知っていて聞いたのだろう。ガキめ。
「結構カッコいいらしいよ」
「男子?」
「そりゃアンタ女の子にカッコいいはないでしょ」
「あっそ。どんな奴なの?」
「お!興味湧いた?」
ニコニコと笑みを浮かべる幸。正直鬱陶しいがそんなに嫌いにもなれない。
「別に」
「愛想ないなぁ」
「で?」
「へ?……ああ、そうだった」
幸。アナタ鶏じゃないんだから。
「その転校生ね、とにかく強いらしいよ」
「強い?」
私が一言聞くと、幸は拳を握りしめてボクシングの真似事をした。
「ボクシングやってて前の学校でも期待の新人、剛腕"ふぁんひーたー"だったんだって!」
ふぁんひーたー?
彼女の言葉をボクシングの常識に当てはめ、頭の中で正しい言葉に変換する。
「インファイターじゃなくて?」
「……そーとも言う」
そーとしか言いません。
この子は何かと詳しいがどこか抜けてる。でもそんな所が人に好かれる要因でもあるのだろうけど。
気を取り直すように咳払いをし、幸は声を低くし続きを話し始めた。
「それでね……実は前の学校の練習試合でスパーの相手を殺しちゃったんだってぇ」
「え?」
いかにもな雰囲気を出していたから何か黒い話があるとは予想は着いていたが、殺すという言葉が出てくるとは思わなかった為、思わず声が漏れた。
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