prologue

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幸と一緒に歩く帰り道。家が近いという事でよく一緒に帰っていたが、今では二人で下校するのがスッカリ日課になっていた。 「でね!あまりにもうざったいからソイツのアレを蹴り上げてやったの!」 「アレ?」 「アレって言ったらアンタ、ナニよ。ナニ」 「うわっ……痛そう」 「女の子で良かったね~」 などと、しょうもない笑い話をしているのが大概で、授業の話や明日のテストの話は全くしない。たぶん考えたくないのだ。前回も赤点ギリギリだったと言ってた。しかし…… 「あ!そうだ和那。今日、9時から星見にいかない?」 ………… 「えっと……明日テストじゃ……」 「大丈夫!もう諦めたから!」 す、素晴らしい。なんて切り替えの速さだ。幸には一夜漬けなんて考え自体ないらしい。 「ね?いいでしょ?テレビで言ってたんだ!今日は雲一つ無くて天体観測には持って来いなんだって!」 「ん~」 正直、幸の提案は私も賛成したかった。しかし今はもう10月。流石に外は寒い。どうしたものか…… 「お菓子持ってくからさ~」 「お菓子……」 一瞬にして寒さの問題が小さくなり頭の中から消えていく。 幸の作るパウンドケーキやクッキーは下手な喫茶店なんかより数倍旨い。それに夜空の下で食べられる。私はすぐさま首を縦に振り快く引き受けた。 「ココアも付けなさい」 「了解!」 お菓子、ココア、天体観測。 こんなに贅沢して明日のテスト大丈夫かしら? まあ、なんとかなるよね。私は。
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