空想具現化~黒~

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…彼は吠えた、ありったけの感情を解放して。まるでそれが彼女に対する鎮魂歌かのように。悲痛な叫びだった、時間も空間も切り裂くような。そして彼は彼女に誓ったのだ、本当に神様がいるのなら俺が、俺が…殺してやると。 そこでその物語は終わっていた。読書後の余韻に浸りながらその本の内容を思い返す。いつでも物語の終わりは寂しい。たとえハッピーエンドでも、現実に戻された自分だけが取り残された気持ちになる。バッドエンドなら尚更だ。それはどこか、夕暮れに一人公園に取り残された幼い頃の記憶に似ている。遠くでひぐらしが鳴いている、放課後の図書室はあまりに静か過ぎて時間を忘れてしまう。しかしながら掛け時計を見ればとっくに下校時間だった。僕は慌てて鞄に本を突っ込むと夕闇から逃げるようにそこを立ち去った。
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